お台場近辺の海は死後の世界と繋がっていて、死者の魂がお醤油差し型の魚となってやってくる。
そんな噂を信じるしかない私は、フランスパンを片手に釣りへおもむく。この海で死んだ、親友にまた会うために……(表題作)
他、犬になった兄と檻に戻っていく妹の話、キメラと無職男の一日の話、蛇の裏側と全裸の同級生の話、『東京かぶれ』の叔母と呪いの話など、すごく暗くはない、だけどぴかぴか明るいわけでもない、読むと痕がしっかり残るような短編集。
その昔、チョコレートを食べることを禁じられ、口にしたことがわかると『憎悪』という罰を母親に課せられていた主人公・梨穂子。
時が経ち、大学進学を機に親元を離れ暮らしていた彼女だったが、ある日突然、二年ぶりに母親から電話がかかってくる。その内容は「実家で暮らしているはずの兄が、突然犬になってしまった」という不可解なもので……。
檻から半身だけ出ることができた人間の、その後の話。
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人間は、起こす行動すべてに整理された理由が必要とされる。他人に筋道立てて話せて、納得されるような理由が。
勤めていた会社を辞め、悠々自適な生活を送る無職の男。そんな彼には同居人がいた。しかし、そいつは人間などではなく、うさぎの頭にカラスの胴体を持ったスクヴェイダーもどきだった。
あべこべなままでは生きていけない、この嫌な社会を生きるキメラふたりの、とある一日のお話。(4000字くらい)
だから、私は胸を張ってこう言える。私は、水の中から裏側をのぞくことができる人間なのだ。
水中から、泳いでいるシマヘビの裏側を見たことがあるということを自慢にしている主人公。そんな彼女は、日々周りで起こることを俯瞰で見るような考え方を続けている。だがある日、『痛い』彼氏がいるひばりちゃんから、クラスメイトの猪狩が夜中、近所の川で全裸で泳いでいるのだという噂話を聞かされるが……?
裏側を見て馬鹿にするのに、自分も裏返っていることを忘れている。そんな愚か者たちの物語。
「今の職場に就職して最初の出勤のときにね、すごく大きなキリンを見たのよわたし」
長野に両親とおばあちゃんと共に住むマサヨシの元には、お盆になると必ず母の姉のフユノさんが帰省してくる。両親いわく、彼女は東京に住み、東京で仕事をしている『東京かぶれ』らしく、マサヨシもそこまでは考えないまでも、あまり彼女のことが得意ではなかった。しかし、小学生最後の夏休み、マサヨシはこれからのこと、そしてフユノさんが語って聞かせた不可解な話について考えを巡らせることになる。
ゆりかもめ線青海駅近辺は、人魚釣りのメッカとして日本中、いや、世界中で広く知られている。
お台場近辺の海は、死後の世界と繋がっていて、魚の形をした死者が泳いでいる。釣り上げて名前を呼ぶと、会いたかった人にまた会える。青海の海で亡くなった親友・佐奈を釣りあげるため、そのような不確かな噂に舞花はすがりつき、毎日のように竿とフランスパンをたずさえ青海駅に向かっていた。喪服代わりの、着崩していない中学の制服を身にまといながら。
徐々に忍び寄る卒業。進まない漫画研究会の部誌。もうひとりの友達。死後の世界とこっちの世界。それでも、時間や関係はどんどん変質させられてしまう。その中で舞花が出す、答えとは。
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