「わたしが、お前とつきあいたいと思うのは、わたしがお前を好きだからだよ」
殴られたようだった。僕は自分の耳に届いた言葉に打ちのめされた。好きだなんて、母親にしか言われたことがないのに。
思い出したことがあった。ランドセルのことだ。昔からわたしは黒色が好きだった。身につけるものも自然と黒を選ぶことが多かった。だから小学校に上がるとき、買い与えられたランドセルが黒色だったことに文句は言わなかった。それが普通なら男の子のための色だと知っていても、文句は言わなかった。
夕日の差し込む部屋から、ピアノの音と歌声が聞こえた。懐かしいメロディー、懐かしい歌詞、子どもの頃よく聞いた、そしてよく歌ったあの歌。
ああ、私には、まだこの歌声があったんだ。
これが私の世界。
「僕」は昔から私に優しい言葉をくれる。慰めてくれるし、励ましてくれる。他の誰もが気にかけてくれないような小さなことを、小さなことだからと片づけないで、すくいあげてくれる。さらりと、あっさりと、私のことを助けてくれる。
「僕」と会って話せるのは、雨の日だけ。雨の日ならばいつでも会えるわけではなくて、会えない日もある。いつ会えるのかはっきりとは分からないけれど、ただ私は「僕」と過ごす不思議な時間が好きだった。
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