こちらのアイテムは2019/3/21(木)開催・第8回 Text-Revolutionsにて入手できます。
くわしくは第8回 Text-Revolutions公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

おもいでつづり

  • B-33 (ローファンタジー)
  • おもいでつづり
  • 暁 湊
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 364ページ
  • 1,500円
  • http://www.pixiv.net/novel/sh…
  • 2016/12/4(日)発行
  • 【刀剣乱舞二次創作】【へし切長谷部×燭台切光忠】
    ワンドロ(へし燭版深夜の60分一本勝負(@hxs_onedrawing))参加作品をまとめた総編集です。
    期間中に参加した作品+再録するにあたり追加した作品+書き下ろしの作品=45本を収録。
    同じ本丸の設定をベースに、お題によってそれぞれ設定を追加しています。
    ノベルティとして、クリア栞がついてきます。読書のお供に、どうぞ。

    以下、サンプルです。

     泥のように眠りたい。そう思ったのは、久しぶりだ。
      ふらふらとおぼつかない足取りで長谷部は廊下を歩いていた。くわりと欠伸を何度も繰り返し、その目元にはうっすらと、しかししっかりと隈が浮かんでいる。目も充血していて、赤い。完全なる寝不足である。ちなみに、徹夜三日目である。なぜ長谷部がこんなことになっているのかといえば、仕事のし過ぎ、これに尽きる。このところ審神者が毎夜作業をしているので、気になった長谷部が手伝うと申し入れたのが始まりだ。最初は戦うことが本分のお前にこんなことは頼めない、と突っぱねていた審神者だったが、毎日毎日止まらない欠伸を指摘され続ければ、折れるのも時間の問題だった。
      この本丸では、出陣、遠征、演練を行った部隊の隊長がその時の記録を報告書にまとめて審神者に提出し、それらをまとめた資料を審神者が政府に月に一度提出している。審神者は几帳面で真面目な性質であるため、書類仕事を溜めることはほとんどない。普段の資料整理ではこれほど時間がかかるわけがないと不思議に思っていた長谷部だが、共に仕事をしてその理由を知った。
      今月は、出陣の回数が多かったのだ。それに加えて、本丸全体での出費も多く、経理方面の資料作成に時間を取られていたことがわかった。経費として本丸運営費を落とす以上、その使用目的、用途は明確にする必要がある。それらの資料をまとめるのに手間と時間がかかってしまっていたのだ。幸い、長谷部は計算事がそこそこ得意だったため、手伝うことはできたが如何せん量が多かった。如何に仕事が早い長谷部といえど、出陣や内番をこなしながらの資料作成には時間がかかる。それでも審神者と共に机に噛り付き、なんとか資料をまとめ上げたのだ。
      助かったよ、長谷部。ありがとう。
      その言葉に、長谷部の疲れはふっとんだ。審神者の執務室を出る一時までは。だが、自室へ向かう廊下を進むごとに身体は重くなっていくし、思考もどんどん鈍くなっていく。幸いなことに、今日一日は暇を貰ったので、このまま部屋に戻って眠りたい。そう思っていた長谷部だったが、足はふらりと無意識に自室を通り過ぎた。
      自室を通り過ぎてしばらく歩き、たどり着いた部屋の障子を長谷部は無言で開いた。そこには、布団の上で身体を起こしている燭台切がいた。時刻は早朝。早起きな刀剣はそろそろ置きだす頃である。突然部屋に入ってきた長谷部に、燭台切は目を丸くして、慌てて身なりを整える。
     「え、あ、おはよう、長谷部くん」 「あぁ」 「こんな朝早くにどうしたんだい? というか、部屋に入って来るなら一言声をかけてくれないと困るよ」
     「あぁ」
     「ってか君、武装一歩手前じゃないか。これから出陣じゃないのかい?」
     「あぁ」
      そこで、ようやく長谷部の様子がおかしいことに燭台切は気づいた。彼の知る長谷部であればこんな早朝にいきなり部屋を訪ねてきたりはしないし、急ぎであるのならその理由を必ず説明してくれる。ただ燭台切の言葉に合槌を打つだけのことはしない。どうしたんだろうかと長谷部の動きを伺っていると、当の本人はふらりふらりと燭台切に近づいてきて、やがて布団の上に崩れ落ちた。
     「え、ちょ、長谷部くん!?」
      慌てて長谷部の身体を受け止める。何とか押しつぶされることは免れたが、身動きは取れなくなってしまった。僅かに呻くが、それよりも長谷部の方が心配だ。落ち着いて長谷部の様子を探ると、もぞりと長谷部の腕が燭台切の腰に回る。
     「ねむい、ここは、あたたかい、なぁ」
     「……長谷部くん?」
     燭台切の問いかけに返るのは、すやすやと心地よさそうな寝息。そっと髪をかきあげると目を閉じて、眠っている顔が見えた。その目元に浮かんでいる隈に、ようやっと燭台切は状況を察した。そして、はぁと盛大なため息をつく。まったく、要らぬ心配をしてしまったではないか。  

ログインしませんか?

「気になる!」ボタンをクリックすると気になるサークルを記録できます。
「気になる!」ボタンを使えるようにするにはログインしてください。

同じサークルのアイテムもどうぞ

【300SSラリー】白魔の誘い【発行延期】その思い出はおいくら?〜2〜その思い出はおいくら?運び旅おもいでつづり残火日常茶飯

「気になる!」集計データをもとに表示しています。