「赤目のおろく」と同世界観シリーズの長編小説……の試読版。冒頭部分を掲載予定。
地獄の闇から生まれ出たあやかしが創り出す幻影の森は、死者の魂を呑み込むだけでなく、死者を彼岸に送るべき死神達をも惑わし、取り込んでしまう。
大切な者を取り戻すため、一人の死神と一人の武士が、呪われた花の狂い咲く森の中、妖鬼に戦いに挑む。
時代小説風の和風怪奇ファンタジー。
秋には本編を出せると思います。
<あらすじ>
この世とあの世の境目を流れる三途の川。
川を渡れば、すぐそこは冥府・・・・・・地獄の世界への入り口である。
英太郎の営む「目玉売り屋」は、その三途の川のほとりに佇んでいる。
「目玉売り屋」で売るのは、妖怪や神様の目玉等、一風変わったあやしの目玉。目玉は、様々な色の瞳、大きさを持っていて、まるで魚のように、店先に並べた大きなタライにはった水の中に泳がせている。
店主の英太郎は、元は地獄の死神であったが、とある理由により、死神を辞めてしまい、百年程前に目玉売り屋となったのだった。
そして、目玉売り屋で英太郎と同居しているのが、死神の左之吉である。
死神である左之吉の仕事は、現世に死者の魂を迎えに行く事だ。死神は、三途の川沿いの堤道を、死者の手を引いて渡し場まで案内する。しかし、破天荒でいい加減な性格の左之吉は、あまり仕事に対して真面目ではなく、時折、問題事を引き起こす事も少なくない。
その左之吉は、閻魔大王の一人娘のお辰に思いを寄せ、何かと気を引こうとしている。
お辰はお洒落好きで華やかな出で立ちを好み、英太郎の店の常連客であるが、意外にも閻魔大王の片腕として冥府の雑事を取り仕切り、死神連中を統率しているしっかり者の娘だ。
ある日、地獄の世界は「無間地獄の底」から湧き出た夜の闇に覆い尽くされてしまう。
そして、時を同じくして、左之吉はお辰から呼び出しを受ける。
左之吉は、お辰からの逢い引きの誘いではないかと思いこみ、喜んで出掛けるのだが・・・・・・。
予告編では、物語の鍵を握るある人物の登場シーンを中心に、前半から一部分を抜粋して掲載します。