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【歴史】【SF】【ハイファンタジー】【伝奇】【2次創作】【BADOMA】掘り出しミックスナッツ −ジャンルごた混ぜ短編小説集 2−

  • C-25〜26 (ハイファンタジー)
  • ほりだしみっくすなっつ
  • 野間みつね
  • 書籍|A5
  • 60ページ
  • 300円
  • https://mitsune.jp/Books/utsu…
  • 2015/12/19(土)発行

  • 後世の人間の評価? それが俺を救うとでも言うのか? 寝惚ねぼけるのも大概たいがいにしろ。


     ふと立ち寄った図書館で見付けたのは、俺の母校の卒業アルバムだった。……しかも、俺が卒業した、百年前の。

     一次創作4本「百年目の再会」、「倫秋兄様みちときにいさま奮戦記」、「それは、二月十五日の夜に」、「最後の帰郷」と、二次的著作物ではない二次創作「うつわを巡りて」を、それぞれ全てリライト/リバイス/書き下ろしして収録。

     === 以下抜粋 ===

     案内された部屋の中に足を一歩踏み入れた瞬間、何かしらおんな感覚がうなじでた。
    (……何だ?)
     黒魔道師は内心でわずかに身構えたが、室内には特に変わった様子はない……ように見えた。よくある応接おうせつで、部屋の中央付近には低いロー方卓テーブルを挟む形でふたつのなが椅子いすが置かれている。その一方には、白ローブを身に纏った五十がらみの女性魔道士が腰掛けており、部屋の壁際には、あたかも用を言い付けられるのを待っているかのようなぜいで、白ローブの魔道士が五人、点々と佇んでいる。
     だが、黒魔道師は、どうして自分が嫌な感覚を覚えたのか、三秒で気付いた。
     ずれている。
     応接席の配置が、いぶかしいほどにずれている。扉から見て部屋の中央に見える位置に、方卓テーブルではなく、いた長椅子が──自分が腰掛けるのであろう場所があるのが、何となく気に入らない。部屋を囲むへんの長さがほぼ同じに見えると言うことは、あの位置は正方形の中心、換言かんげんすれば、その四辺それぞれのちゅうてんと接する円の中心になる。
     彼は、一礼するさいに素早く、足下あしもと敷物しきものに目を走らせた。
    (──模様に見せ掛けてはいるが、魔道文字──この部屋自体に魔法陣が描かれているのか?)
     何と書かれているかを読み取ろうとした時、腰掛けていた女性魔道士が立ち上がり、微笑と共に穏やかな声を掛けてきた。
    「ようこそ、〝誓言せいげんから逃げる魔道師〟殿」
     黒魔道師は、僅かにまゆひそめながら顔を上げた。
     その、魔道士としては不名誉極まりないふたつ名は、主に黒の魔道の使い手たちが使う呼び名である。まさか、いささか過激とも言われているほどの〝白〟魔道士たちの結社である〝光と妖精を追い求める者たちの会〟に属している人間から、その呼ばれ方をされるとは。
     嫌な予感がますます強まったが、黒魔道師は取りえずは何も言わず、再度静かに頭を下げた。……今は余す所なくさらされている黒髪だが、三か月前までは、トレードマークのようにかたくなに巻き続けていた白いターバンに殆ど隠されていた。だが、つき前、愛した者を見送った時に共にめ、以来、二度と巻いてはいなかった。彼女と共に老いて死ぬことの出来なかった我が身の代わりに、永遠の野へ一緒に旅立ってほしかったからだ。
     白い物を全く身に纏わなくなったせいで、それまで以上に黒魔道士と見られ易くなってしまったという自覚はあったが、だからと改めるつもりは、彼にはなかった。彼女と出会う前からずっと白ターバンをトレードマークにしていた自分は、その自分を愛してくれた彼女と共に永遠の野へと旅立ったのだ。今此処ここるのは、他の黒魔道士たちから〝誓言から逃げる魔道師〟と不名誉極まりない異名いみょうたてまつられている、呪われた存在に過ぎない……。

         ───「器を巡りて」より

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