こちらのアイテムは2018/7/16(月)開催・第7回 Text-Revolutionsにて入手できます。
くわしくは第7回 Text-Revolutions公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

アカシアファミリアス

  • C-05 (ライトノベル)
  • あかしあふぁみりあす
  • 柏木むし子
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 62ページ
  • 200円
  • 2016/01/31(日)発行
  • 数多の世界へ記者を派遣し娯楽書を発行している出版社、アカシア書房。
    その構成員21人と組織をひたすら紹介する「キャラクター紹介掌編本」です。

    雑用と呼ぶにはあまりにオーバースペックな雑用係・ロセロが語る仲間たちの姿がもりもりすし詰め。



    ===【苦悩するチート鑑賞会エントリー(No.17)】===

    (本文より抜粋)

     術の発動は間に合わないと踏み、飛来する刃の半数を撃ち落として身を翻した。うち一つが腕を掠めたが、痛み具合からして皮膚を切った程度だろう。問題はない。
     跳んだ先で強く床を蹴って前進。これから戦場となる部屋は無駄に広く、標的との距離は遠い。奴の動きを注視しながら空間歪曲の術式を組んだ。
     自分の中に存在する無数の歯車を噛み合わせてゆくような、並んだ針に糸を通して回るような、とにかく他のものには例えがたい感覚。術式はすぐに完成し、時を同じくして標的が手を振り上げる。先ほどよりも多い、複数の小さな刃が俺めがけてまっすぐに飛んできた。
     刃が俺に突き刺さる前に術を発動する。俺は目の前に現れた空間の揺らぎに飛び込み、刃と標的の間――奴の目の前に飛び出した。相手もそれは予想の範疇だったらしく、即座に腕を振り上げて防壁を展開する。うす赤く輝く膜は非常に硬く、足を掬うための蹴りは見事に弾かれた。足首に鈍い痛みを感じつつ、横に転がってから体勢を立て直す。先ほど俺がいた位置に刃が降り注ぎ、床が針山になった。
     軽く跳んで一度距離を取ると、相手もまたじりじりと後ずさる。見たところ迫撃戦よりも距離を取っての射撃を得意としているようだ。すうと消えゆく結界の向こうで、奴が気持ち悪いほど整った顔を歪めて笑った。後で形が変わるまでその顔殴ってやる。
     俺が一度攻撃の手を止め、標的の様子を窺う態勢に入ったと見るや、目の前のクソ野郎は芝居じみた大げさな語り口で御託を垂れ流し始めた。
    「さすが奴の右腕だ、いい腕をしているじゃあないか! しかし人の顔を見るなり殴りかかってくるのは不躾ではないかな」
     「それが仕事だからな」
     「仕事? 本当にそれだけかい? 君が仲間思いの男であることはよく聞いたからね」
     やけに楽しそうな顔と粘ついた声。少し言葉を交わすだけで、俺が関わりたくない類の生き物であることを再認識させられる。皮膜を持つ黒い翼が生えているからどうだという話ではなく、その精神構造がとにかく気に食わない。こいつの言葉に耳を傾けるぐらいなら、羽虫が飛ぶ音を聞き続けているほうがまだマシだ。
     奴は余計なことをべらべらと語りながら、掲げた手の周りにまた無数の刃を生み出していった。瞬く間に倍々に増え、奴の周囲を埋め尽くした小さな刃は、武器であり防具でもある。策なしに突撃すれば、大きな血まみれの毬栗ができあがることだろう。 「さあ! 予定よりは早いが、君も私のコレクションに加えてあげよう!」
     手を振り下ろすと同時に、刃の一部が俺を目指して高速で突っ込んでくる。その眩さに切り刻まれる前に、備えておいた術を起動し空間の綻びへと飛び込んだ。着地したのは奴の背後、刃を避けるために少し距離を取って。
     標的は振り返る前から狂いなく刃を操って迎撃を試みる。俺は最初の刃による追撃を防ぐべくすぐに道を塞ぎ、また新たに小さな道を作った。繋げた先は異なる世界の見知った部屋。俺の武器庫だ。目当てのものをしっかりと掴み、引き抜く。そして数歩の助走をつけ、そいつを力いっぱい振りかぶった。
     その間に刃が喉を狙うが、噛みついて動きを止めた。高濃度の魔力がもたらす刺激が歯を痺れさせる。そのまま首を振り、喰らいついた刃で他の攻撃を打ち払った。口の端が少し裂けたがまあ問題はない。俺は構わず手にした大きな槌を振り下ろした。刃をひとつへし折りながら、床を目掛けて、力いっぱい。
     石張りの床に亀裂の花が咲き、轟音を伴って足場が崩壊を始める。建築物を呪う槌の効き目はばっちりだ。嫌そうな顔をした標的は、翼を緩く羽ばたかせてその場に留まろうとしていた。まあそうなるだろうな。俺は噛んでいた刃を捨て、建材の破片を吸わぬよう息を止めて、普段の数倍の力を注いだ術を組み上げた。空間を歪めたのはすぐ下の階、崩れゆく天井を受け止める形で大きな道を作ってやる。行く先はその真上、敵の頭上だ。
     短い悪態が聞こえた、ような気がした。降り注いだ石材は奴の纏う結界に阻まれ、その体に傷をつけることはできない。しかし設置していた刃を痛めつけ、配置をばらばらにしてゆく。それらを整えるまでの一瞬の隙を狙い、俺もまた空間の揺らぎに飛び込んで左手を伸ばした。
     手首と固着した腕輪から、魔力製のワイヤーを数本射出、獲物をぐるりと取り囲んで絡ませる。結界をきつく締め上げながら、ワイヤーを巻き上げて一気に距離を縮めた。邪魔な刃は武器庫から引っ張り出したナイフですべて弾いてゆく。硬い音が何度も響く中、勢い良く防壁を踏みしめ、靴裏を見せつけてやった。
     「この……痴れ者がッ!」
     つい先ほどまで余裕綽々だった奴の顔に焦りが生じている。俺を歓迎していたんじゃなかったのかよ。ケツ穴の小さいやつだな。

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