『名もなき』人々の、いつかやどこかがここにある。
砂原藍のサイト『eye's cafe』の採録掌編集。
サイトから掌編4本+未収録作品『久遠の空』を収録。
- 【収録作】
- 微妙な年ごろの女性の誕生日 『やわらかい気持ち』
- 男子大学院生×女性助教授 『花のよう』
- 女子高生×先生、卒業式 『立つ鳥跡を濁して』
- 同級生男女、初恋 『久遠の空』
- 幼馴染男女×手の届きそうな距離、もどかしさ 『愛があるなら』
【試し読み(一部抜粋)】
『やわらかい気持ち』
27歳ともなれば、友だちはみんな自分の人生を歩んでいる。
資格を取ったり、転職を考えたり、恋人ができたり、結婚・出産したりとその様子はさまざまで、そんな中、今はかかわりの薄い友だちの誕生日までいちいち思い出したりしない。
ましてや、学生時代のように誰かの誕生日だからといって、手料理と酒を持って自宅に押しかけるなんてことは本当に稀で。誰からもメールの一通さえ来ないのは、そういうこと。
『花のよう』
その美しい人は、野辺に咲く花のようにひっそりとたたずんでいた。
僕はそこが大学の図書館であることをしばし忘れた。