こちらのアイテムは2017/10/28(土)開催・第6回 Text-Revolutionsにて入手できます。
くわしくは第6回 Text-Revolutions公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

白の垣間見

  • F-21 (ファンタジー)
  • しろのかいまみ
  • 藍間真珠
  • 書籍|A5
  • 40ページ
  • 300円
  • 2011/05/05(木)発行
  • ライトなSFファンタジー。
    見習い研究者のリーツは、喧嘩真っ最中のセレイラとともに『外』へ見回りに出る。そこで二人が目にしたのは、謎の白い宇宙船だった。

    サイト掲載済み 同世界観作品あり

    WEB版 http://indigo.opal.ne.jp/novel/kaimami01.html
    試し読み http://books.doncha.net/happy-reading/detail.pl?uid=113335991&bookid=139


     頭上から、名を呼ぶ声が聞こえた。幼い子どもが笑うような楽しげな声音は、何か悪戯でも企んでいるものに思えて。リーツは必死に重たい瞼を開けると、のろのろと体を起こす。ここはどこだろう? 回らない頭で彼は考える。
     いつの間にか眠っていたらしい。痛む肩をほぐしながら右へ視線をやると、窓の外では見せかけの太陽が輝いていた。
     思わず目を細めた彼は、額に皺を寄せつつ乾いたつばを飲み込む。ゆったりと流れる雲の横では、まやかしの鳥が羽を広げていた。
     まさかもう昼時なのか? あくびをかみ殺すと、彼は強ばった首を巡らして周囲を確認する。だが辺りには誰もいなかった。それどころか靴音一つない。あの声は夢の中のものだったのか? 落ち着いて考えてみれば、この研究所に子どもがいるはずなかった。
     彼が横になっているのは古ぼけたソファの上だった。研究室へと続く廊下の隅に設けられた、休憩用スペースにあるものだ。
     どうしてこんなところにいるのだろう? 彼の記憶にあるのは、昨夜眠気覚ましにと廊下へ出たところまでだった。ということは、ソファを見つけてほぼ無意識に倒れ込んだのだろうか。彼は顔を引き攣らせる。
    「うわ、やっちまった」
     首を鳴らしながらソファの背にもたれかかり、彼は寝癖のついた髪に指を差し入れた。
     行き詰まった論文のせいでここ数日寝ていなかった。それでも、あともう少しというところまで来たのだ。しかしこれでは今日も書き上がりそうにないと、彼は重いため息を吐く。
    「今日、何もなかったっけなあ」
     放置されていたということはそうなのだろうか。ここにいれば誰かしら通りかかってもいいはずだが、起こす気はなかったようだ。よれよれになった白衣の裾を無理矢理伸ばして、彼は立ち上がる。
     頭の右側が痛んだ。しかしこれは寝不足時の癖のようなものなので、あえて意識しないようにする。彼はそのまま重たい足取りで研究室へと歩いた。
     薄鼠色の廊下に反響する足音は一つで、この建物には誰もいないのでと錯覚するような静けさだった。おそらくみんな部屋にこもっているか、仮眠でも取っているだけだろう。論文提出の締め切り近くはいつもそうだった。
     薄汚れた研究室に入ると、彼は後ろ手に扉を閉めた。まず目に入ってくるのは本棚から溢れ出した本、そして整理し切れず床に積まれた資料の山。かろうじて物が置けそうなのは奥にある机の上だけだった。
     そこを死守しなければいけないというのは、幼馴染みであるセレイラからの忠告の一つだ。昨日もやかましく注意されたので、渋々と片付けたばかりだった。
    「あれ?」
     その唯一何もないはずの机の上に、見慣れぬ物が置かれているのに彼は気づく。細長い金属に何か布が巻かれているようだ。資料の山をまたいで進んだ彼は、机の前へと辿り着く。
     それは鍵だった。さび付きかけたものを保護するつもりなのか、生成り色の布に包まれている。鍵の先だけが飛び出している状態だ。
    「ああっ、今日は当番の日かよ」
     彼は顔をしかめると頭の後ろを掻いた。伸びた髪を無意識に引っ張ったためか、銀糸が数本指に絡みつく。それを適当に振り解いて、彼は鍵を拾い上げた。崩れ落ちそうな書類に白衣が触れないよう、念のため気を遣う。
     その鍵は見回りの際に必要な物だった。いつもは手渡しされるはずだが、彼が不在だったので勝手に置いていったのだろう。彼の研究室への出入りは実質自由だ。仲の良い者ならみんな知っている。
     見回りの相方はいつも通りセレイラだろうか。そう思うとますます憂鬱になり、彼はきつく眉根を寄せた。

ログインしませんか?

「気になる!」ボタンをクリックすると気になるサークルを記録できます。
「気になる!」ボタンを使えるようにするにはログインしてください。

同じサークルのアイテムもどうぞ

スウィートスタイルエボリューションエッセンシャル技使い君ときっとルリンゴのパイを誰がために春は来る白の垣間見色鉛筆の菜園わたしとあなたのあわいのことのは【ゆるっとSF参加】white minds 第1巻white minds 第2巻white minds 第3巻white minds 第4巻white minds 第5巻white minds 第6巻ひとときのまじない【300SSラリー】ゆめゆめ惑うことなかれ【無料配布】【300SSラリー】甘すぎる無駄づかい藍色のモノローグ information No.34【無料配布】white minds 第一部完結記念誌藍色のモノローグお品書き

「気になる!」集計データをもとに表示しています。