こちらのアイテムは2017/4/1(土)開催・第5回 Text-Revolutionsにて入手できます。
くわしくは第5回 Text-Revolutions公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

蜂蜜と少年

  • 委託-16 (ファンタジー)
  • はちみつとしょうねん
  • 月灯
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 56ページ
  • 400円
  • http://dkonline.blog.fc2.com/
  • 2017/4/1(土)発行
  • テキレボ5のアンソロに書いた少年の友情ファンタジーです。
    アンソロ分を加筆修正、その後のお話です。
    アンソロの加筆修正版をブログで読むことができます。

    今後【小説家になろう】への投降の予定がありますので全文webにて読むことが可能になります(テキレボ終了後投稿予定。具体的には未定)

    以下サンプルとしてアンソロの加筆修正版の冒頭です。興味を持っていただけたら幸いです。

    -・-・-・-・-・-
    プロローグ - はじまりの嘘
     それはよく晴れた朝のことだった。晴れた日は危ない。蜂と呼ばれる大型の昆虫が数多く飛行しているからだ。それらは人間でいう、幼児ほどの大きさがある。具体的に言うならば一メートル弱といったところか。一匹ならまだしも群れに出くわしたなら確実に命は失われると言われていた。大昔、もはや記録らしい記録も残っていないほどの昔は人の指先程度の大きさしかなかったと伝えられている。しかしソラが生まれたこの時代では作り話だったのではないかと疑ってしまうほどに巨大な生き物だった。こちらから危害を加えることさえしなければ彼らは滅多に襲ってくることはない。出会ってしまったならとにかく地に伏して、通り過ぎるのを待つことが最良の手立てであった。
    「ソラ! 今日は? 遊べる?」
     幼馴染のユエットが声をかけてくる。年こそ同じ二人だったが水色の髪を持ち着るものも粗末なソラとは対照的で燃えるような赤の髪を持ち、村長宅の跡取り息子であるユエット。二人は間違いなく親友だった。だが二人を見る周囲の目はそうと思っていない。孤児であるソラに気を使ってあげるなんてなんて優しいおぼっちゃま、というのが村の大人の見解だ。  十年ほど昔、嵐が来るまでこの村はそれなりに豊かな村だった。だがたった一度の嵐のせいで多くの建物は崩れ、村の作物にも甚大な被害を及ぼし畑の意味を成さなくなった。ただ人死にが多くはなかったのが救いだった。その際、王から命じられて王とから村へと遣わされた新たな村長がユエットの祖父だ。詳しく語るものはいなかったがユエットの祖父は王都で大きなしくじりを起こした。その償いの為にこの村の建てなおしを命じられたのだ。こんなはずではなかった、と零す祖父は既にいないけれどその息子であるユエットの父は成人直前まで貴族として過ごしてきたせいか祖父同様の気質を持ち、村人に対して尊大な態度をとり続けた。徐々に寝込みがちになった祖父の代わりに村長の仕事をこなしてはいたが村に馴染むつもりなどは微塵もなかった。同じく王都にいた時分から屋敷に勤める者たちも村人を見下していた。自分たちは王都で生活することを許された、身分の高い貴族であったという過去の栄光に縋りつき、身分や教養、貴族としての決まりをユエットに押し付けてくる。彼らにとって村人とは教養のない下等な生き物で、その中でもソラは一番の弱者であり浅ましい人間であると決めつけ、元とはいえ貴族の跡取り息子であるユエットが交流を持つことを良しとはしなかった。  当然ではあるがユエットはそんな父や屋敷の者達を嫌っている。この村で産まれ育ったユエットに貴族の矜持など育つはずもない。だから父の言うことや屋敷に勤める者達の言葉に理解も共感もできない。周囲の、自分を利用するために近づいて来る村人たちは口ではユエットのことを誉めてくれるが父親に会わせろ、口を聞いてくれと願望ばかり押し付けてくる。同じ年頃の子供として一緒に遊んでくれるのはソラだけだった。そのソラを見下し遠ざけようとする者達への反抗心からか殊更乱暴に振る舞うようになってしまっていた。
    「あと水汲みだけなんだ」  周囲の声に気付かぬふりをして幼い二人は連れ立って河辺へと向かっていく。 「なんでいつも川へ行くんだ? 村の中に井戸があるじゃん」 「井戸より川の方が近いもん」  村の中心に井戸はある。その側に住めるのは村長やその血縁者たちだ。そして村の外へ行くほどソラのような孤児や独り者が暮らしている。その結果、村の最南に住むソラの家とも呼べないような小屋からは川の方が近かった。   川のほとりで水を汲むついでにと水浴びをする。ソラは川の水がだいぶ温くなってきて助かると笑った。ユエットも川に飛び込みたい衝動に駆られてはいるが我慢している。一度飛び込んで、怒られたのはソラだったから。 『ぼっちゃまを冷たい川の中へ入れるなんて!』  ユエットがどんなに自ら進んで川に入ったのだと言っても大人は誰も信じなかった。それ以来ユエットは自分の言動に気を付けている。例えば今、一緒に歩いているソラの持つ桶を一緒に持とうものならまたソラが怒られる。だからソラの仕事には手を出したくても出さないのが自分で決めた決まりだった。 「さ、これで終わりだよな? 南の森の方で花が見つかったって父さまたちが話していたんだ。見に行こうぜ!」  ソラの返事を聞くまでもなくユエットは駈け出した。  二人の生きるこの場所で花は貴重なものだ。大型の、ソラたちと変わらない大きさの蜂と呼ばれる虫が蜜をとるために寄ってきてしまうため育てることはできない。ぽつりぽつりと野に咲いている分には問題はない。だが畑ほどの広さになればたちまち蜂が寄ってくる。蜂たちは受粉の手助けをし蜜を得ている。その花を摘み取ってしまう人間は餌を奪う外敵として攻撃を仕掛けられる。結果、この世界に甘味と呼ばれるものはほぼ存在しなかった。自然の中に育つ果実。そしてごく稀に蜂たちの巣が天災などで壊れた時にそれを回収して僅かに残っていた蜜を集められるだけだ。そしてそれは城下町から徒歩で一週間はかかるソラたちのところへは届かず伝説のように語り継がれるのみだった。

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