この世には、言霊が見える人と見えない人、それから言霊に触れることができる人の3種類の人間がいる。言霊揺らしは一番珍しく、上方の世界から下界を飛び交う無数の言霊を眺めて暮らす。「働かない言霊揺らし」
大きくなったら誰某ちゃんのお嫁さんになる。ほほえましい言霊が桜色のふわふわに包まれて上方まで漂ってくると、そっと揺らして誰某ちゃんの元へ送り出してやる。……
紋章師の仕事は毎日目が回るほど忙しい。朝から晩まで人々の要望に応えていると一人では到底さばききれないので、受付と管理と紋章師見習いの3人を雇っている。それでも紋章師は忙しい。「変遷する時代の紋章師」
まず子供が生まれたときに、裕福な親族がお祝いに子供用の紋章を依頼しにくる。普通は成人するときに自分で申請する紋章が最初のものになり、子供用の紋章があってもこのとき無効になる。長い人生、途中で職業を変えることもある。……