こちらのアイテムは2017/4/1(土)開催・第5回 Text-Revolutionsにて入手できます。
くわしくは第5回 Text-Revolutions公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

泣草図譜文鳥編

  • 委託-09 (ファンタジー)
  • きゅうそうずふぶんちょうへん
  • うさうらら
  • 書籍|その他
  • 32ページ
  • 400円
  • 9種類の草花を詠んだ短歌と物語のシリーズ、泣草図譜第3弾です。装丁は概ね前回同様で和紙&和綴じのA6横版。福井県小浜の春が舞台。豊富なイラストを織りこみながら短編『海柘榴』のスピンアウトをお送りします。おじコレ、鳥散歩企画参加作品

    ☆オマケつきです☆
    海柘榴シリーズでキーパーソンとなる大桑が主役の小咄を折本にした「花うさぎ深夜便」

    内容詳細
    :単独で読めますが北陸アンソロの『海柘榴』スピンアウトです。『海柘榴』主人公の徹が春休みに一人で小浜へ帰省する話。はじめての一人旅、はじめての春の小浜でこれまでは見せなかった顔を見せる従兄、伯父。
    春爛漫の花の中、一足先におとなになって離れてゆく従兄の背中を追う少年の心情を綴ります。

    冒頭500字程度の試し読み:

    『泣草図譜文鳥編』

    口にしただけで春めくハルジョオン
    きみの名前のかわりに呟く


    夏なら午前中に宿題をするとか午後は浜へ泳ぎに行くとかなにかしらやることがあったのに春は特段することがない。
    徹は炬燵に脚を突っ込んで外を眺めた。
    廊下で素足を投げ出し西瓜を喰べる夏のあの濃い緑がいまはすっかり褪せ赤い椿だけが狂ったように花を咲かせている。


    退屈はそのせいだけではなかった。
    春は呉服屋にとって稼ぎ時で家の者たちに客人をかまう余裕がないのだ。

    さらに、勝である。
    夏のあいだ彼が占領していた廊下の籐椅子は座布団やひざ掛けの置き場と化している。
    彼がどこにいるかといえば、四畳半の自室に籠りきりなのだった。
    もう昼も近いのに勝はまだ顔を見せない。


    両親が一緒だと徹の布団は勝のベッド横に敷かれ寝起きを共にしていたが、今回は違う。
    徹一人だから部屋に余裕があるというだけなのか、もしや中学2年になる勝にとって二つ年下の自分が越境を許されない存在になっているのか。
    そんな思いが、勝の部屋の戸を叩くだけのことに少しの勇気を必要とさせた。




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