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キスがスキ!

  • 委託-45 (2次創作)
  • きすがすき
  • 鳴柳綿絵
  • 書籍|A5
  • 26ページ
  • 300円
  • 2016/10/9(日)発行
  • 月刊少女野崎くん 堀×鹿島の本です。
    二人が付き合っている設定で、顔にやたらキスしてくる堀に困る鹿島の話です。
    以下に冒頭サンプルを掲載いたします。pixivサンプルと同じ内容です。

    **********

     私の彼氏は、いわゆるキス魔だ。少なくとも、私はそう思ってる。
     腰に腕が回されて、引き寄せられる。頬に触れた柔らかな感触に、身を捩った。
    「ちょ、ちょっと先輩」
    「なんだよ」
     口づけられた箇所を、大きな手が這う。顔の向きを変えさせられて、反対の頬にもキスされた。そのまま額やまぶた、鼻先と唇を落とされ、また頬に戻ってくる。でも、唇には触れてこない。
     二人きりの時、堀先輩はこうやって執拗にキスをしてくる。よく分からないけど、私にこうするのが好きらしい。いくらなんでも他の人にはやってないはずだけど、世間で言うキス魔の範疇には入ってるんじゃないだろうか。多分、だけど。
     先輩の唇が、私の口端を掠める。また頬に滑ったところで、彼の肩を押した。
    「先輩」
     先輩が少し身体を離す。
    「なんで口にはしないんですか」
     彼が何度かまばたきした。
    「なんでって」
     彼の指が、私の唇をなぞる。
    「唇へのキスは、他とは違うだろ。なんか、特別っていうか」
     優しい手つきに、背筋が震えた。ただ触られているだけなのに、鼓動が速くなっていく。
    「それは、分かりますけど」
     額や頬へキスするのと、唇同士を触れ合わせるのは違う感覚だというのは理解できる。でも、だからってお預けを食らうのは納得できない。
    「私はもっと、唇にしてほしいです」
     先輩が私の目を見つめてくる。肩をすくめて、顔を寄せてきた。唇を重ねられ、まぶたを下ろす。彼の背中に腕を回して抱きしめると、彼も抱き返してきた。角度を変えて口づけを深くした先輩が、私の唇を軽く舐める。少し口を開けると、彼の舌が入って来て、私の舌に絡んできた。彼の服を強く握りながら、私も舌を動かす。
     やっぱり、唇へのキスがいちばん好きだ。頬とかにキスされるのはくすぐったいけど、互いの唇を触れ合わせるのは気持ちいい。こうして舌を絡め合うと、なんだか身体を繋げている時を思い出して、頭の中が熱くなってくる。もっとこうしていたい。彼をもっと感じたい。
     先輩が唇を離す。唾液が糸を引いて切れる光景も、彼が自分の唇を舐めるところも、なんど見ても気恥ずかしい。私の唇についた唾液も舐め取られて、頭を撫でられた。髪に唇を落とされて、それがこめかみ、頬と下りていく。
    「って、またこの展開ですか!」
     先輩が顔を離して、不思議そうに見つめてくる。
    「何か問題があるのか?」
    「ないですけど、そもそもなんでそんなにキスしてくるんですか?」
    「なんでって、したいから」
     先輩が額にキスしてくる。
    「やることやってんのに、なに照れてんだ」
    「て、照れてるというか」
     先輩の唇が、鼻先に触れてきた。
    「照れてんだろ」
     右頬にキスされて、息を漏らす。確かに、それは否定できない。こうやって顔中に施されるキスは、さっきみたいな舌を絡めるものと違って、性的な色がないからだ。先輩から愛されてるのは伝わってくるんだけど、親から子どもにするような優しいキスは、逆に気分が落ち着かない。彼に抱かれる快感を知ってしまったからか、寸止めされているような気になってしまう。蛇の生殺しっていうのは、こういう状態のことを言うのかな。
     こんなことを考えているあいだにも、先輩は私の顔のあちこちにキスをしている。たぶん私の顔面で、キスされてない場所なんてもう残ってないだろうな。幸せなことだと思うし、この状況に困っているなんて他人に言ったら、十人中十人に贅沢な悩みだと返されそうだ。でも、
    「さすがにキスしすぎですってば!!」
     また先輩の肩を押して引き剥がすと、目を丸くして見つめられた。

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