彼は最初彼女にとって珍しい少年、という風に映った。
なぜなら履修者のほとんどが竜人に属する古代竜人語の履修を、人間の少年が取ったからだ。
彼女も最初は物珍しさから取ったのだろうと思い、いつまで続くか、というような事を茫洋と思ったものだった。
何故いつまで続くか、などという教育者にあるまじき事を考えたのか、
それは古代竜人語の履修に当たって人間の─時に竜人でさえ─
発生することが喉の構造的に不可能な単語が入っている事が一因だった。
これまでも少なからず古代竜人語という、
現代ではすっかりマイナーになり一部の裕福な竜人やその一族の支族に連なる一般家庭から
考えると多少歴史のある竜人の子供しか履修しなくなった科目。
そんな科目を取ってもお試し期間中に科目替えをする人間の子供、
というのは目にしてきた。
なので彼女にとって彼は珍しい─完全に存在しないわけではない─
子供だったのだ。
だが、彼女の想像は少しだけ外れていた。
初めての授業で彼女が授業で古代竜人語を紡ぐのを、なるほど、分からん、という態度で聞いていたその少年が放課後。
彼女一人が占有する古代竜人語科の教師部屋にその少年が訪ねて来たことでそれを思い知る。