思い描こう。蒸気と煤煙の白い煙に包まれた帝都の姿を。 その和州最大の都市国家を取り囲む壁を。壁の名は〈城壁〉という。
◇概要3作収録の
短編集となります。付録に帝都小辞典を収録。
※蒸奇都市倶楽部の作品群は共通の世界設定を用いております。内容は直接の続きものではありません。
残部少数!◇収録作品(掲載順)
(1)
猫か鼬か(2)
地底の大機関(3)
自警団の結成こちらで立ち読みもできます。(創作文芸見本誌会場 HappyReadingさま)各作品のあらすじ等はURLの電子広報当該記事の他、下にも掲載しています。
◇収録作あらすじ(1)『猫か鼬か』義憤に燃える正義の銃士は悪党を始末する。緊張からの解放にひたる男に無遠慮な拍手が向けられた。
「君の銃には信念が無い」
冷たく言い放つは赤き異能の女。冷たい弾丸を放つ赤き異材の女。彼女は正義の銃士を鼻でわらう。
「君のその自尊心を根本から粉砕してやろう。決闘でな」
不敵にわらう女は、今日も赤をまとう。
(2)『地底の大機関』「ああ、未だにこの耳から離れようとしないのです」
打ち明ける男の瞳は黒く淀んでいた。
「ええ、配管工の私はその日、点検の為に中央市に赴いておりました」
男は仕舞い込んでいた恐怖をゆっくりと吐き出していく。
「あれは、ああ、まさに〝奴〟の息遣いだったのではないかと」
それは恐怖の再生ではなかっただろうか。
「思わず振り返ってしまった私は見たのでございます!」
帝都の地下深く、男はあの日を思い返す。
(3)自警団の結成それはまだ《時計塔》もない時代。終戦がもたらしたものは国家間の平和。終戦が持ち帰ったものは大都市の混乱。蒸気大戦直後の帝都は暴力と混迷に見舞われていた。戦場から帰還した兵隊崩れたちが市を荒らす。
道重は兵隊崩れの襲撃により市で死人が出たのをきっかけに仲間たちに用心棒の雇用を提案する。
「用心棒ってのは、まぁまぁいい手だ」
そう言って道重の肩を叩いたのは誠道と名乗る男。彼は俺も兵隊崩れだと名乗った。
激しい暴力の中にも立ち上がろうとする者はいる。彼らが築くものは……。
まだ誰も、過去の罪を数えない。