こちらのアイテムは2017/4/1(土)開催・第5回 Text-Revolutionsにて入手できます。
くわしくは第5回 Text-Revolutions公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

【SF】【歴史】【時代劇】精鋭

  • B-15 (ファンタジー)
  • せいえい
  • つんた
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 500円
  • 【歴史・時代劇】【SF】泡盛さん・外伝


    「なー」

    「んー」

    「あのしっちゃかめっちゃかな飛び方してる戦闘機、誰だよ」

    「…総裁殿下様だ」

    「なんか命がすげえもったいなくなってきたぞ、俺」

    「そうだろうなあ…安心しろよ、副官殿が立派だから」

    「ああ、そう…」

    宇宙空間でそんな会話をジルベスタとかわす。そうしながらも、彼の操縦技術は的確だった。

    「おまえさんはエースになれるかもな」

    「そっかなー」

    自覚のネジが一本抜けていると後々評されるだけあって、実にのほほんとマイペースだ。

    「ディッコン」

    「んー」

    「戻るぞ」

    「了解」

    戦艦に着艦するのも自動ではなく手動で行っても、彼の操る機体は難なく発着場に滑り下りることが出来ていた。

    「なるほどね…」

    いい感覚だ。直観力も鋭いし、洞察力もある。眼力もある。騎士として一流になるはずの能力だが、彼は指物師だという。愛称・ディッコン。本名はなぜかあまり名乗りたがらなかった。

    「どうだ、宇宙ってのは」

    「ある意味怖いな」

    「怖いってわかってるからこそ、相応しいんだよな」

    「ん、それ何」

    「怖さを知らないってのは問題なんだよ」

    訓練生専門の戦艦の廊下をパイロットスーツのまま、歩く。遠くに総裁とその副官が歩いていくのが見えた。

    「ありゃ、殿下は副官殿にくどくど叱られているだろうな」

    「みたいだな」

    どこかしょげて見える総裁。

    「殿下、か」

    「最初は閣下だったんだけどね、みんな殿下って呼ぶようになってた」

    「本人はどうなんだ」

    「ああ、かまわないらしいよ」

    「ふうん…」

    彼はその称号に特に関心がなさそうに見えた。

    「王家のお歴々、か」

    そう溜息をついて口にすると、ジルベスタは笑っていた。

    「そういえば、おまえ」

    「本名はね、そうだよ」

    プランタジネットの苗字を使っている。ここで使えると知って遠慮なく使っている状態だ。十六世紀では使わず、何回も名前を変えて過ごしてきた。

    「ここなら使えるから」

    「誰の子なんだよ、エドワード四世とか」

    「さてね」

    それは言わない。もっと親しくなったら、あるいは…。そう彼は思っていた。

    「まあ、それは前の事だし、かまわないけどな」

    ジルベスタはそう言った。それに安堵している彼をジルベスタは目を細めて見ていた。

    「おまえ…プランタジネット狩りから逃げていたのか」

    「まあ、そうだね。ヘンリー七世はマシだった。その息子は、ありゃはっきり言って頭おかしいぜ、狂ってやがるよ」


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