「その昔、人は形の無いものを信仰しました。実態のない何かを祈ることで救われると思いました。そのお蔭で“妄信”に長けた我らが先祖は素晴らしい芸術作品を生み出すことが出来ましたが、現実味のない信仰は数を増やし争いました。全ては実態が無いからです。二〇三〇年、神は実態を持ったのです。我々から情報を喰らい、数字を更新する。そして正しく現実的な施策を示して我らを救うのです。解りますか?」
「――――つまり、神は、SIRI」
「SIRIはハードに過ぎません。神を宿す器に過ぎないのです。正しくはソフトの部分であります。そうそう、このSIRIには“天使”が備わっていますので、その設定はご自分でしておいて下さいね。で、これが聖書です」
聖書、と言われて差し出されたのは説明書だった。