こちらのアイテムは2015/10/10(土)開催・第2回 Text-Revolutionsにて入手できます。
くわしくは第2回 Text-Revolutions公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

夢守人黒姫 Love in a mist

  • 委託-27 (ライトノベル)
  • ゆめもりびとくろひめらぶいんあみすと
  • 服部匠
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 96ページ
  • 300円
  • 2014/11/23(日)発行
  • 『その夢と愛は、ねじれた真っ直ぐなものだから』
    愛と欲望と執着が渦巻くバトルヒロイン・ヤングアダルトノベル!

    <こんな要素が好きな人へオススメ>
    夢の中・人間の欲望・一方的な愛情・きらびやかな女の子キャラクターのバトルアクション・短編読み切り

    <あらすじ>

    「貴方の夢に、お邪魔させてもらう」
     かつて人気子役として一世風靡した過去を持つ少女・藤崎綾乃。舞台への憧れを秘め、退屈で平凡な日々を送る彼女の前に、青い髪の少女・青子が現れた。綾乃はその日から、華々しい舞台の夢を見るようになるが、それは同時に、彼女の心と身体を蝕んでゆく悪夢でもあった。親友が教えてくれたおまじないに助けを 求めた綾乃の夢に、巫女服の少女・黒姫が桜の花吹雪と共に現れた――。
     夢の秩序を守る夢守人・黒姫と、悪夢を植え付ける夢魔・青子との戦いと執着を描いた、夢幻想現代ファンタジー。

    イラスト:灯屋駆舞(pixiv) 様

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    pixiv

    <冒頭抜粋>

    「貴方の夢に、お邪魔させてもらう」

     呪文を唱え、少女は他人(ひと)の夢の中へ、足を踏み入れる。

     はらり、と少女の目の前に、青い花びらが舞う。

     視界一面に広がるのは、咲き誇る無数の――青い花。何も知らない者が見たのなら、たちまち見惚れるだろう美しい花畑。しかし、彼女はそんな花々を、鋭い眼光で睨み付ける。

     少女は何か探しているのか、辺りを見渡す。そして、ともすれば頭の芯がぼやけるような、強烈に甘い匂いが漂う花畑の中を進み始めた。桜色の巫女服を纏う少女は、青い花畑の中では一際目立っている。

     少女の所作は一見たおやかだが、地面をしっかりと踏みしめていくその姿には、勇ましさすら感じる。後ろでひとまとめにした茶色の髪が、穏やかな風と花びらの中で揺れた。

     時折頬を掠める青い花びらの、ひんやりとした感触が疎ましいのか、その度に少女は手で払いのける。

     暫く進んだ所で一旦立ち止まる。そして、居心地の悪さを払拭するように、軽く深呼吸をしてから、辺りを再度見渡す。

     少女が右手に持つ桜の枝を軽く振った。するとその枝は、桜色の淡い光を放ちながら、桜の蒔絵が施された、美しい短刀に変化した。

     短刀を手にした少女は、再び歩き出す。少し進んだ先に、病衣姿の子供が、仰向けになって寝ているのが見える。近づくと子供の顔は、青白く、苦悶の表情を浮かべていた。この子供が、夢を見ている本人……夢主(ゆめぬし)らしい。

     少女は、性急な様子で片膝を付けてしゃがむと、夢主の胸元を見やった。

    ――病衣の胸元を破る、緑色の茎。その先に付いているのは、はちきれんばかりに膨らんだ、花の蕾(つぼみ)。

     胸元には、小さな蕾のついた花が一輪、生えていたのだった。

     しかし少女は、植物が人間に生えている事に驚く様子は無く、逆に、ほんの少しではあるが、安堵したような顔になった。

    「開花は―まだか。しかし、病苦の夢に付け入るとは……」

     年は十歳にも満たないだろう、まだ幼い子供だ。病衣に包まれた身体の細さと、こけた頬、そして、腕に刺した点滴の管。

     夢主の痛ましい姿に、少女が憐憫の表情を浮かべたその時だった。

    「ううっ……」

     突然、夢主がうめき声を上げた。はっとして少女が胸元を見ると、蕾がざわざわと動くのが見えた。次の瞬間、茎が急速に成長し始めた。更に、生えてきた蔓(つる)が夢主の身体の上を走るようにうごめいて、絡みつく。

     そして最初こそ小さかった蕾は膨らみ―夢主の顔よりも大きくなった。

    「しまった、開花が!」

     少女は鞘から短刀を抜き放つ。しかしそれと同時に、青い花の中から、ぬるりと何かが姿を現した。

     蕾が開くその様子は、まるで出産のようであった。長い髪の頭、妖艶(ようえん)な笑みを浮かべた顔、細い首、ふくよかな乳房。それはまるで、人間の女の姿のようだ。そしてその、白い身体全体には、黒い斑(まだら)模様が施されている。腰から下は現れず、花の中に埋まったままだ。その風貌や、全身から発せられる邪悪な気から、それは人間ではなく、怪物と称するのが正しいだろう。

    「陰(いん)獣(じゅう)め……!」

     ホホホ、と甲高い笑い声と共に、寄生していた夢主からずぼりと離れる。怪物―陰獣の花から下は、無数の根が、カサカサと音を立てて、まるで足のように蠢(うごめ)いていた。

     少女はひらりと軽い足取りで後ろへ飛び退き、陰獣と距離を取る。陰獣の姿を観察し、様子を伺おうとしているのだろう、冷静に、吐息一つ漏らさぬよう、注意を払う。

     陰獣は、少女と目を合わせた瞬間、根の足を操り少女へと迫ってきた。陰獣が腕をしならせると、その手先は無数の管状のものに変化し、少女を狙って鋭く伸びる。その先端には鋭い針が見え、その姿はまるで点滴のようだ。

    「……っ!」

     少女は、俊敏な動きで短刀を目の前で掬(すく)うように走らせる。すると、先端の針が切り取られ、少女の足元にぼとぼとと落ちた。

     針先を切り取られた陰獣は、驚きからか動きを止めた。その顔から笑みが消え、代わって鋭い眼差しを少女に向ける。そして、金切り声を上げながらその場で上半身をよじらせると、短刀が切断したはずの断面から、針を再生させた。

     世にも恐ろしい光景だった。しかし、短刀を構えたまま静観する少女の顔には、聊(いささ)かも動揺の色は見えない。まるで、少女にはそうなる事が分かっていたかのようだった。

     一瞬の沈黙が流れた後―陰獣は再度少女を睨みつけ、再び無数の管を繰り出した。良く見れば管の本数は先ほどよりも、増えている。

     それでも、少女に動揺は見えなかった。それどころか、襲い来る管と針を切捨てながら、軽い身のこなしで陰獣への距離を詰めていく。

    「オモイバナ!」

     少女が短刀を握らない左手を、手のひらを上に向けて開いた。すると手のひらの上に、桜の花びらが降り積もるように、徐々に小さな桜色の光が積み重なっていく。少女は左腕を振って、オモイバナと呼んだその光を陰獣に投げつける。オモイバナは鎖のように、陰獣の身体に絡みつき、動きを止めた。

    「私に応えろ」

     少女の呼び声に、短刀の刃が桜色の光を帯びる。動きを封じられた陰獣は、狂ったような叫び声を上げながら、もがき苦しんでいる。少女は素早く短刀を顔の目の前に構えると、振り下ろした。

    「昇華(しょうか)・桜花(おうか)繚乱(りょうらん)!」

     その速さ、まさに紫電(しでん)一閃(いっせん)。

     迫った刀の刃先は、刃筋(はすじ)が揺れることなく斬撃を浴びせた。桜色に彩られた切れ目が広がると同時に、陰獣の耳障りな断末魔が響く。すっかり陰獣の身体が桜色に染まると、青い花びらがはらりと散って、声ごと消滅した。

     同時に、周囲に広がっていた青い花畑も消滅し、むせるような匂いも消え失せる。真っ白になった夢の世界の中、少女は短刀を顔面に寄せ、ふっと息を吹きかける。するとその刃から、白く柔らかな光に包まれた一片の花びらが現れる。光の中には、満面の笑みで花畑を駆け抜ける夢主の姿があった。

     花びらは夢主の胸へ、溶けるように吸い込まれていく。夢主の苦悶に満ちていた顔が、徐々に穏やかな表情に変化した。

    「これでもう、貴方が悪夢に囚(とら)われる事は無い」

     下ろした短刀が桜色の光に包まれ、桜の枝に戻っていく。

     暫く夢主を眺めていた少女は、ふと顔を上げる。まるで、遠くから聞こえた音に、反応したかのように。

     少女は眉をひそめ、枝を強く握り締める。 

    「――それでは、今度こそ良き夢を、貴方に」

     少女はそう囁き、背を向けて夢から去っていった。





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