女の子のぬいぐるみオナニーを
セックス形式で手伝います
ぬいぐるみのように抱きしめられながら思いだした。高校時代、俺はメロンパンの皮を食べる係であり、彼女はメロンパンのわたを食べる係だった。多すぎず少なすぎない量を知っていた。
今ではすべてがものたりない。
去勢された、あるいは精通も初潮もまだの子どもみたくひっつくだけで喜んでいる場合じゃない。
セックスしたい。
同窓会で運命的でもない再会をしその日のうちに連れられた暗い部屋のまんなかで短い毛のカーペットにひざをついて棚やら壁やらベッドに床に飾られ盛られているぬいぐるみを横目にモデルなみに綺麗な薄着の女にふれている高揚のうちにチョメりたい。
でもきっと俺の誇張表現は彼女に伝わらない。
だってぬいぐるみが挟まっているから。
くまのぬいぐるみがふたりの腰と腹のあいだで横にプレスされて手足をぐったりとさせているから。
なんなんだ、この状況?
「デスクワークのわりに、ヘンに筋肉質だね」
抱きしめるだけ抱きしめて侮辱するだけ、綿初玲。
「もっと、フワフワしているかと思った。だけど、大きいのはいいね。とても、抱き心地がよかった」
ぱっ。綿初玲は飽きたかといわんばかりに俺に巻きつけていた腕をはなして立ち上がった。リモコンで部屋を明るくし電気ケトルでお湯をわかしソファに寝転がり。からだをひねったりこすりつけたりしながら服をじわじわと脱ぎ捨てていって下着だけになった。俺の股に残された生暖かいぬいぐるみを足の指でさして「ジョリー。ワタシの親友だよ」と人生にまったく必要のないムダ設定を披露する。しみひとつ、しわひとつないパンツ。
「鮫はあいかわらずだね。いろいろと言いたそうだけど、言ってこない」
「何から指摘すればよいものか、わからんもんで」
「ああ、すこし話し方が変わったね。彼らもそうだった。みな、むかしのようにはいられないのかな」
言いたい。こんな悪趣味すれすれの少女趣味は捨てちまって少しはむかしと変われと言いたい。
「綿初、良うないよ。そん恰好」
「ジョリーにちんちんを押しつけたくなるから?」
ぐう。
「ちんちんじゃねえよ、ちんこだよ」
「へんなところでムキになるね。それと、ワタシが鮫でキミが綿初なのはアンフェアだよ。これではせつない片思いじゃないか」
「うーん」
ソファから飛び起きた綿初玲は沸かしたお湯で汲んだ茶を客に渡すことなくこくこくと飲みはじめた。片方の肩ひもがずれてこぼれそうなぐらい大きなおっぱいが片乳だけこぼれている。……。
「呼んでくれたら、もう片方も見せてあげるよ」
「玲」
「はーい♡」
酒が悪いんだ。初恋の女の子が大人になっておっぱい丸出しでこちらを見下ろしている幻覚が見える。下半身だけ現実のようにはりつめているが、きっとそれも酒のせいだ。暴力も暴言も暴行も事故も死傷もぜんぶ酒のせいだ。「痴女が!」これも酒のせい。「ヤらせろ!」これも酒。「いいよ」あれもこれも、俺たちはいつになったら責任をとれるのだろう?
俺はひざを抱えて綿初玲に背を向けた。右手にはジョリーの首をつかんで。いつでも握りつぶせるぞといわんばかりに。といっても、彼女の部屋を見るに奴のかわりはいくらでもいそうなもんだ。目前には芋虫が転がっている。永遠に成虫にならない芋虫。
「何があったんだよ」
「そうだね。ワタシは幼いときから父から性的虐待を受けていてね。学校ではいじめに遭い、帰り道ではレイプをされ、母親からは暴力をうけ、友人に裏切られ、付き合っていた彼氏の元カノに妬まれて階段から突き落とされて流産してしまったんだよ。いやー、まいったね。これではセックスに寛容な女の子になってしまってもしょうがない」
顔を見なくてよかった。本気で殴るところだった。安堵したあとで視界の端からひょっこりと綿初玲のニヤニヤ顔が現れた。手の甲で叩くと「あはっ」と甲高く鳴いた。死ねばいいのにと思った。
「がっかりだ」
「不幸な過去をもった女の子でないとイヤだなんて性格が悪いね♡」
ふたりで名藤くんの教科書やノートの裏に磁石をつけて釣りゲームを作ろうとしたことがあった。国語は重すぎて釣れなかったが、物理とノートはよく釣れたという、名藤くんの不幸な過去を思い出した。
綿初玲は俺のそばでしゃがみこんで抱えていた膝頭を人差し指で何度も擦った。「体育のとき、みなでずらっと整列したあとこうやって座っただろ。もしも誰かひとりがごろんと力なくそのまま横に倒れたらぶつかった拍子にばたぱたとみな倒れていって人間ドミノが成立するんじゃないかって思ったものさ。子どものときにやった、あの危なっかしい組体操よりよっぽど芸術的な光景だっただろうな。今や試すことはできない。友人を集めて理由を話してやってみてブログや動画にアップロードしてネタにすることはできても、当時のような純粋な可能性は永遠に失われている。わかるかい?」と言いながら指にどんどんと力をこめて俺を倒そうとしたが、そんな話はわからんかったし、わかってやるつもりもなかった。
「緊張してるのか。べらべら喋りやがって」
「ああ、だってキミは断るから」
綿初玲は俺の膝への連打をやめて上目遣いをした。
断るはずがない。つまさきまで異常でも、彼女は美しいから。
なんでもない梅雨の日、彼女に「なんかラメでも塗ってんのか」と聞いて笑われたもんだ。冗談じゃない。本当にキラキラしていた。ひとりだけ晴れの日みたいに。
それに……。
綿初玲は俺を傘の中に入れてくれた。
腕を高く上げて不安定になる傘の下で、肩や首を不規則に濡らしながら、一緒に帰っているうちに雨が止んで、なのに別れるまで傘を開き続けていた。
「緊張してるのかい。もんもんと黙りこくって」
性格はおいといて最高の女だ。
性格をおいとかないと最低の女だ。
「後悔しても知らんからな」
「それはキミに言いたいね。もう後戻りはできないよ。バグで閉じこめられてからのセーブだからね」
ほらみろ、この絶望的な会話。
ゆるんだ俺の右手からジョリーを奪いかえした綿初玲は「大きくてフワフワしているだろう。家にやってきたとき、ワタシはまだ小さくて、さらに大きく見えた。まるくて黒くてきれいな瞳。頬擦りをするとちょっと痛い。きちんとひとりで座ることができる。自立しているんだ。足に頭を置いて手で顔を隠すと安心する。もちろんまぶたはチクチクするよ。それから寝転ぶ自分のからだに、のしかかるように彼を抱くときも」と言いながらパンツをずらした。
課題をこなすためにカフェイン飲料を飲んだあとの、あの不安感だった。
「な、なんでパ、パ……」
「そりゃ汚れやすいからね。月に一回は来るアレのときなんて最悪だよ、黒くなったソレがこびりついて固まるんだから。おしっこだってさ。彼の顔面に性器をこすりつけるときに、すこしでも清潔にしたいという乙女心だよ」
綿初玲はパンツを指でくるくると回転させたあと、その勢いでぽいと投げ飛ばし観葉植物にひっかけた。
「ぬいぐるみセックスしよう?」
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