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【あらすじ】
帝都の書生・穂倉達朗は、亡き友人の水谷雅人が幼少期を過ごした明町を訪れる。しかし彼の実家を探す途中に立ち寄った甘味処で、己の眼鏡を紛失してしまう。彼の眼鏡は偶然にも雅人の義妹・紗和の手元にあった。風に身を沿わせて刀を振るう、飛由流の使い手である紗和の元に、身を寄せることとなった穂倉。友人と義兄、大切な存在を喪った二人の瞳に、世界はどのように映りゆくのか。
【紹介文】
以前メフィスト賞の座談会で取り上げていただいた作品です。
眼鏡とお菓子にピンと来た方は是非どうぞ。
ジャンルは明治時代文芸ライトノベル。切なさをあなたに。
350ページ/A6文庫本フルカラーカバー付き
以下冒頭になります。
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1 東風
眠りへ誘うように揺れる列車の中、青年は窓の外へ顔を向けていた。遠くを見るように細められた眼差しは、まるで過去を眺めているようでもあった。
そのまま彼は、懐かしい記憶へ想いを馳せる。
この世を直視しないことが幸福だろう、とこの身を授けた存在は知っていたのかもしれない。一本の線さえもぶれて見えるこの瞳は、時に危うく、時に不自由であっても、自らが明瞭な線を定める力を与えてくれた。
しかしそのように思うなど、今となってはもう昔の話。
青年は一度瞬き、眼鏡を押し上げた。
「美しい景色だ……」
この視界は、これほどまでに鮮やかなのだから。
汽車は走り続け、そこから生まれた風が枝を揺らす。
窓の外を流れる景色がやがて止まり、青年は列車を降りた。駅はまばらに人が行き交う程度で、青年へ目を向けるものはいない。
「本当に来てしまった……」
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