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スウィートスタイルエボリューション

  • 委託-11 (小説|ファンタジー・幻想文学)
  • すうぃーとすたいるえぼりゅーしょん
  • 藍間真珠
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 84ページ
  • 500円
  • 2015/12/30(水)発行
  • 可愛いものに囲まれて優雅な時を過ごす。そんなささやかな願いも叶わない世の中。店の前で立ち尽くしていた私に声を掛けてきたのは、見るからに純朴そうな青年だった。
    「その素敵な気を分けてちょうだい?」
    矜持、空腹、羨望、遁走。突き付けられた選択肢。生きたいように生きるにはどうすればいいの?

    純朴青年×見た目幼女の、ビター&スウィートなライトファンタジー!

    同世界観作品あり
    表紙イラスト:李杜さん

    試し読み http://books.doncha.net/happy-reading/detail.pl?uid=113335991&bookid=836


     こういったお店の前で立ち尽くすのは何度目のことだろう。店に限らず当惑した大人に阻まれるの含めれば、日常茶飯事だった。困り顔のウェイトレスを見上げて私も眉尻を下げる。
    「どうしても駄目なの?」
    「申し訳ありませんが……」
     可愛らしく小首を傾げてみても、背の高いウェイトレスはさらに躊躇するだけ。先ほどからこの繰り返しだった。よくあることとはいえ、その度にやっぱり少しは落胆する。往来を行く人々の足音が、そこはかとなく無愛想に響いた。
     店の前の看板には美味しそうなケーキの名前がずらりと並んでいる。そしてこの店構え。白い壁は綺麗なままだし、入り口を花で飾る余裕もある。それだけで、この店が高級な部類に入ることは間違いなかった。だから選んだのに。
    「お金ならあるから」
     私は革袋を目一杯高く掲げてみせる。軽く揺らせばじゃらりと金貨の鳴る音。どの星でもこの手の硬貨なら通用することはわかってる。それでも若いウェイトレスは首を横に振るばかりだ。店長を連れてきてくれるような素振りもない。
     ――原因は私の容姿にある。レースとフリルをふんだんに使ったドレスを着た、十歳にも満たないだろう女の子。
     それだけでも目立つのに、一番問題なのが一人という点だ。傍に大人がいればどこかの商家のお嬢さんにも見えるかもしれないけど、私はいつも一人きり。だから大抵の人間は入店させるのを渋る。
    「ねえお願い」
    「申し訳ありませんが」
     私だってあのきらきらとしたケーキが食べたい。甘い香りのするお茶を飲んで、静かなお店でくつろぎたい。優雅な時間を過ごしたい。でもそんなささやかな願いが叶うことさえ滅多になかった。今日のウェイトレスも説得は難しそうだ。
     ため息を吐いてうなだれると、不意に視界に影が落ちた。その原因が背後から近づいてきた人のせいというのは、振り返らずとも気でわかる。私の真後ろで立ち止まった人がいる。
    「僕と一緒ならいいですか?」
     私はゆっくり振り向いた。そこにいたのはひょろっとした体躯の青年だった。年は人間の言う二十歳前後くらいだろうか。純朴という単語を絵に描いたような笑顔で頭を傾けている。飾り気のない衣服に鞄という出で立ちからは、田舎者という印象を受ける。
    「ええっと」
     しかし、いきなりこの声掛けはどうなんだろう。私の反応によっては即変質者扱いなのに。そう考えると、こちらの対応も悩ましい。ウェイトレスは私と青年が知り合いかどうか、はかりかねているみたいだ。
    「どうですか?」
     本当なら私もこの青年を疑るべきところだけど、でも彼の気がそうさせない。何かを企んでいる者の気じゃあなかった。そんな薄暗い感情が一つも滲んでいない、清らかな気だ。
    「え、いや、あの……」
    「ねえ、店員さん。これでも駄目?」
     予想外な流れだけど乗ってみてもいいか。どうせ単なる相席だ。私がにっこり笑うと、店員は渋々といった様子で頷いた。断る理由が見つからなかったのだろう。
     私はひらりとスカートを翻して、青年の腕をとった。そしてウェイトレスが次の手を思いつかないうちに、無理やり店内に入り込む。

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